宇部市立楠中学校

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学校の様子

自然と共に生きる未来

(公開日:2025/12/08)

こんにちは。楠中学校です。12月8日(月)です。今日は嬉しいお知らせをお届けします。
本校3年島本杏月さんが第65回宇部市近郷小・中学校作文コンクール(日報作文)において、宇部日報社長賞(中学の部特選)を受賞しました。表彰式が12月6日(土)に恩田スポーツパークにぎわい交流施設で行われました。

本当におめでとうございました。宇部日報新聞(11月21日)に島本さんの作文のことが次のように書かれていました。
キジを通して具体的に描写され、自然の中にある学校に通い自然を大事にしようという気持ちが伝わる。「何がいけない」という否定的な捉え方ではなく、前向きに未来を見据えて具体的な提案がされており、説得力が増している。特に羅列でなく整理された構成で、最後まで主題が貫かれている。宇部ならではの共存同栄の視点が表れており、ぶれずに述べられている。 
今日は島本さんから許可をいただいたので全文を紹介します。楠中生、一読してみてください。

「自然と共に生きる未来」 楠中3年 島本杏月

 私の家の近くには、少し前まで木や草が生い茂る自然豊かな空き地があった。春になると姿を見せるキジはとても印象に残っている。朝には「ケーンケーン」と力強く鳴き、あたりに響きわたる。その姿は堂々としていて、とても美しく見えた。キジの姿を見ると「もう春が来たな」と季節の変化を感じることができた。
 番や小さなヒナを連れて歩く姿を見ることができた。まだ羽も短く、丸っこい体でよちよち歩くヒナたち。その後ろを守るようにメスがつきそい、少し離れたところで見張るオスの姿を見て、私は自然の中で営まれる「命のつながり」を強く感じた。私はその光景が大好きで、楽しみにしていたものでもあった。

 しかし、その場所にはソーラーパネルを設置する工事が始まってから、景色は一変した。草や木はすべて切り払われ、広い土地に黒いパネルがびっしりと並べられた。工事が終わって、私が目にしたものは、空き地に黒い板が並ぶだけの光景だった。以前のように緑に囲まれた自然の姿はそこにはなく、まるで人工的な施設の一部のように見えた。
 それ以来、キジの姿は稀にしか見られなくなった。あの「ケーンケーン」という鳴き声も聞こえなくなり、番や親子で歩く姿も消えてしまった。私は、自然の中で共に生きてきた生き物が居場所を奪われてどこかへ行ってしまったように感じ、とても悲しくなった。
 そして気づいたのは、キジだけでなく、他の生き物の姿もあまり見なくなったということだ。工事前には木に小鳥が止まり、さまざまな虫たちが飛び交っていた。植物がなくなったことで、そこにえさを求めて集まる動物のすみかも奪われたのだ。
 このことから私は、植物と動物のつながりを改めて実感した。木や草があるからこそ虫が集まり、その虫を食べる鳥や小動物がいて、さらにそれを食べる大きな動物がいる。植物は食べ物を与えるだけでなく、すみかや隠れる場所を作り、命を支えているのだ。つまり、ソーラーパネルを設置するために食物をなくすことは、その場所での命の循環そのものを断ち切ってしまうことなのだ。
 ソーラーパネルは、太陽の光から電気を作ることができるため、地球温暖化やエネルギー問題を防ぐ、希望の技術として広がっている。発電のときに二酸化炭素を出さず、資源が尽きる心配もない。家の屋根などに設置すれば、自宅で電気をつくることもでき、災害時にも役立つ。これはまさに「未来のエネルギー」と言いたくなるほど魅力的だ・。しかし、私はこの経験から、「地球のための取り組みでも、実行の仕方を誤れば、本来守るはずの自然を傷つけてしまう」そう感じた。だからこそ、私は思う、大事なのは「使い方」だと。

 たとえば、森や林を切り開いて設置するのではなく、すでに利用されている土地を使うことだ。住宅や学校、駐車場の屋根などは、新しく自然を壊さずにすむ場所だ。また、農地と共存させる「ソーラーシェアリング」の取り組みも広がっている。ソーラーパネルの下で農作物を育てる方法で、エネルギーも食料も同時に得られるという利点がある。パネルの周りに花や低木を植えれば、虫や鳥がまた戻ってくるかもしれない。少しでも緑を増やす工夫をすれば、自然と人の技術が手を取り合う未来が来るのではないだろうか。
 さらに、ソーラーパネルの寿命が来た後の廃棄問題も大切だ。今のままでは大量のごみが出てしまい、鉛やカドミウムといった有害物質が漏れ出す危険もある。そのため、リサイクル技術を発展させ、処理する方法や環境を整えることが必要だ。できれば国内で処理できる体制を作り、不法投棄や国外で処理することはやめなければならない。これも、環境のために欠かせない課題だ。
 私はまだ中学生で、できることは小さいかもしれない。けれど、自然の変化を身近に感じたからこそ、「どうしたら自然と共に生きられるのか」と考えるようになった。エネルギー問題はとてもおおきな課題だが、その解決のために自然や生き物を犠牲にしてしまったら本末転倒だ。人間も自然の一部であり、自然が失われれば、便利さは残っても心のゆとりは失われてしまうと思う。けれど、自然と調和して生きる社会を築けたとき、私たちは物だけでなく、心も豊かになれるはずだ。
 ソーラーパネルの太陽の光を利用する技術は確かにすばらしく、今後の社会に必要だ。しかし、設置する場所や方法を工夫し、植物や動物の命を守りながら進めていくことが大切だ。

 あのキジの親子がまた戻ってこれるような場所をつくり、守りたい。
 緑の中で季節を感じ、鳥の声に耳を傾けながら電気を使う、そんな未来を私は夢見ている。太陽などの力を借りて電気を作る私たちは、自然に対する感謝と責任を忘れてはいけない。自然への思いやり、人への思いやり、そして未来への思いやり。そうした心を持ちながら、自然と共に生きる道を選ぶこと。それこそが、私たちが進むべき未来だと信じている。

 以上、全文になります。

 表彰式において、三浦社長さんは「思ったこと、感じたことを書くことが大切」、叶屋学校教育課長さんは「ことばには力がある」と言われていました。島本さんはまさに思ったこと、感じたことを書いており、そのことばには力があります。
 楠のまちをどうしていかなくてはならないか、考えさせられます。是非、みんなで考えていきましょう。

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